【はじめに】

元地方公務員、地元奈良では対面でそして遠方の方にはオンラインでコーチングをしている澤村一誠です。
大学卒業後、平成元年4月からは奈良県警察官として、平成3年11月に奈良県警察官を退職後は、大阪府の八尾市役所の職員として2021年3月まで合計約31年間地方公務員として仕事をしてきました。
そして労働の対価として約31年間給与を得ていました。
「給料」ではありません。「給与」です。
そういった意味では地方公務員という労働者でした。

【そもそも給与と給料の違いって?】

そもそも給与と給料って違うのをご存じですか?
単に言い方の違いのみだと思っておられる方は多いのではないでしょうか。
恥ずかしながら市役所の人事課長として仕事をしていたにも関わらず私も知りませんでした。
あまり気にされたこともないかも知れませんが、実は大きな違いがあるんです。
自分が稼ぐお金のことですので、しっかりとその違いを把握しておいてくださいね。

「給与」とは基本給・手当などすべてを含んだものです。
勤務先からもらうお金には、基本給と呼ばれるその人に決まって与えられるお金とボーナスなどの賞与、また、交通費、超過勤務手当、扶養手当など手当と呼ばれるものが含まれます。
これらの総称を給与と呼びます。地方公務員に支払われる総支給額です。
では「給料」とは何でしょうか?
「給料」は、「給与」の中に含まれる基本給を指します。
基本給(給料)は、毎月決まって勤務先から支払われる定額のお金のことで年齢や勤続年数、主査や課長補佐、課長といった職階によって決まります。

【給与と給料の違いを知っておく意味はどこにあるの?】

それでは、給与と給料の違いを知っておく意味はどこにあるのでしょうか?
就職・転職時に、給与、給料(基本給)の違いを理解しておくことは自身の生活レベルを検討するためにも必要です。
給与が高くても給料(基本給)が低いと、賞与や手当が出なかったらリスクの高い生活になってしまう可能性があります。
そういった意味でも就職・転職の際は「給与」と「給料」の違いをしっかりと把握しておきましょう。
給料は、固定されたものですが給与は、超過勤務手当の多寡などにより総額が変動します。
就職や転職では、求人票に記載されている給与ではなく給料に注目してください。
給与は変動しますが、給料は固定されたものですのでその金額は保証されます。
記載されたものがなければ担当課に確認することも必要ですね。

【地方公務員の給与はどのように決まるの?】

さて、ここからが今日の本題です。
地方公務員の給与はどのようにして決まるのでしょうか?
民間企業では春季労使交渉とか春闘で決まります。
こういった言葉を聞かれたこともあると思います。
「春季労使交渉とは、多くの企業にとって新年度となる4月に向けて労働組合が月給やボーナスなど労働条件について要求し使用者(経営側)と交渉して決定すること。
連合では「春季生活闘争」を正式名称とし「春闘」と呼ばれる。労組の交渉力を高めるために、産業別などで足並みをそろえた交渉を実施している。
1955年に8つの産業別労組が一緒になって賃金闘争を開始したのが春季労使交渉の始まりとされる。
交渉を引っ張る「パターンセッター」と呼ばれる先導役が賃上げの回答を引き出し、それを波及させるという方式が従来は一般的だった。先導役は鉄鋼から自動車に移ったといわれる。
本来は労使間交渉だが、2013年に政府が経済界に賃金の引き上げを要請。それ以降も毎年介入しており、「官製春闘」とも呼ばれている」(nikkei4946kから抜粋)

では、公務員はどうなっているのでしょうか?
まず、国家公務員ですが、国家公務員は労働基本権に制約があり給与など勤務条件の改定に自ら関与できないため、第三者機関の人事院が国会と内閣に必要な見直しを求める制度があります。これを人事院勧告と呼びます。
国家公務員と民間企業の従業員の給与水準を均衡させることを目的に、原則毎年実施しています。
事前に、民間の事業所1万数千カ所の給与や諸手当の支給状況を把握、その上で、役職や勤務地が同じ国家公務員と民間従業員を比べる「ラスパイレス比較」により、勧告の前提となる給与の差の平均を算出し給与について勧告します。

地方公務員はどうでしょうか。
人事委員会が置かれている団体(都道府県、指定都市及び特別区等)では人事院勧告の内容及び当該団体の民間賃金動向等を総合的に勘案して人事委員会が勧告を行い、国の人事院勧告の取扱いに関する閣議決定を受けて、具体的な給与改定方針が決定されます。人事委員会が置かれていない団体(一般市町村)においては、国の取扱いや都道府県の勧告等を受けて、具体的な給与改定方針が決定されます。
いずれの場合でも、市議会の議決により、給与条例を改正して給与が決定されます。(給与条例主義)

労働基本権に制約があることをお伝えしましたが、地方公務員の労働基本権がどのように制約されているのか全体像を説明します。
日本国憲法第28条で労働者の基本的権利が規定されており、基本的権利は、団結権、団体交渉権、争議権の3つの権利から構成されています。
公務員の労働基本権は、その地位の特殊性と職務の公共性にかんがみ制約がなされています。これに代わる法定勤務条件の享有、人事院・人事委員会による給与勧告等の代償措置があります。

地方公務員の労働基本権の制約は以下のようになっています。
【公営企業、特定地方独立行政法人法及技能労務職員以外の地方公務員】
団結権・・・〇 職員団体制度(地方公務員法第52条➂、教特法第21条の5➀)ただし、警察職員、消防職員は団結が禁止されています。(地方公務員法第55➀➁)
団体交渉権・・・△  当局と交渉することはできますが、団体協約を締結する権利は有していません。 ただし、法令、条例等に抵触しない範囲での書面協定は締結できます。(地方公務員法第55条➈)
争議権・・・✕  争議行為等は禁止されています。(地方公務員法第37条)

【公営企業、特定地方独立行政法人法及技能労務職員】
団結権・・・〇 労働組合制度(地方公営企業労働関係法第5条➀)技能労務職員は職員団体も結成することもできます。(地方公営企業労働関係法附則➄ )
団体交渉権・・・〇 団体交渉権が保障されています。(地方公営企業労働関係法第7条)ただし、協約の効力には一定の制約があります。(地方公営企業労働関係法第8~10)
争議権・・・✕ 争議行為等は禁止されています。(地方公営企業労働関係法第11条➀)

【まとめ】

地方公務員の給与決定の仕組みや労働基本権の制約についてお伝えしました。
民間企業と地方公務員は大きく異なります。
自分の給与についてどのようになっているのか。誰が決めているのか。どのような基準で金額が決まるのかを知っておくことは大切ですね。

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